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一瞬で彼女が2~3人出来る “1-2-∞の法則” について[前編]

前回のあらすじ

僕は長年不安定雇用を続けて来た。しかし一念発起し就職活動をすることにした。僕には語学力という強みがあった。そして僕は、インドでの仕事を見つけた。

 

ただ、僕は正社員として働くにあたって大きな課題を持っていた。それは「ロクな社会人経験が無い」ということだった。

 

更に付け加えるなら、僕はみんなと協力して働くための意識も常識も欠けている。

 

これは日本でもインドでも、この地球上で正社員をする限り、必ず身に着けなければならないことだった。

 

どうしたものかと、僕は日本地図を開き思案した。すると、日本各地に散らばっている「これまで迷惑をかけた人々」の顔が浮かんできた。それは主に肉体関係を持った女性たちだった。

そうだ、考えていても仕方がない。この一つ一つの関係を清算するという実務を通すことで、僕はまっとうな人間に近づけるのではないか。

 

そう思ったが吉日。僕はインド渡航までの二ヶ月間、日本を旅しながら彼女たちに会うことにした。

 

 

「海外就職が決まったので、渡航前に会いたい」。この口実で昔の女に会えるぞ。インドに行く前、フルタイムで働き始める前に遊びまくってやる。

 

゛ありったけの娑婆の喜びをかき集め、僕は地獄に落ちるのだ”

そう僕は鼻息荒く意気込んでいた。
この旅を通して、僕はどれだけ常識を身につけることが出来るだろうか。

 

####

 

僕は昔から彼女を複数人作ってしまうクセがあった。

始めて二人以上の彼女が出来た時、10代だった僕はそのことを両者に隠して交際を続けていた。ただ、時代が進むにつれ、それを上手く隠すことが困難になった。

 

2000年代初頭に思春期を迎えた僕たちの「恋愛スタイル」は、それをとりまくメディアの影響に翻弄され続けた。

 

当初、僕が彼女と連絡を取る手段といえば、携帯電話のMMS(携帯アドレスメール)だった。好きな子と個人的にやりとりしたければ、

 

相手のアドレスを手に入れ、それをアドレス帳に打ち込んでようやく連絡が出来た。また、電話したければ高額の通話料金を払う以外の方法しかなかった。

 

しかし現在はどうだろう。Lineがあれば24時間無料で相手の近況をビデオコールなどで把握できるし、位置情報サービスの発展により、遠隔から相手の所在地を常に監視することも出来る。

 

 

一度でも浮気を疑われれば、こうした無料のアプリケーションを駆使し徹底的に追い詰められる。20年前のSF映画で敵対サイボーグの電脳を焼き切るために使われていたソフトウェアが、現代は巷に溢れている。

 

ただ、僕は非常に原始的なやり方でこのネットワーク技術の進歩に抗っていた。
それは以下のような仕組みだった。

 

① :最初に出来た彼女には、普通の彼氏として振る舞う。

②:2番目に出来た彼女に対しては、「一番目の彼女がいるけど君も大事にします」。とあくまで浮気をしているというスタンスで振る舞う。

③:そして、3番目からは「オレは彼女を作らない。気に入らなければ他の男を見つけてくれ」。とお互い都合の良い関係を作ろうと振る舞う。

これにより、複数の彼女に使う時間を配分する際、ある程度理由を説明出来るようになった。

 

①の彼女と会う予定があったとしても、②に対しては「ごめん、その日は彼女と会わないといけないから」と言えるし、③に対しては何か適当な言い訳を言ってごまかす事が出来た。

 

この場合、①の彼女はなるべく遠くに住んでいて、頻繁に会えない人を選ぶなどやり方も進歩させていった。

 

これはおそらく何千年も前からあらゆる文化文明の男がやっていた手段だと思う。

 

しかし僕はこれを「1-2-∞の法則」と名付け、まるで自身が発見した新たな物理理論を説明するかのように偉そうに友人に語っていた。

しかしこの、自身の恋愛関係を維持するための根幹と言うべき「1-2-∞の法則」は、たった一度の「騎乗位」によって、粉微塵に破壊されてしまうのだった。

 

####

 

 

台湾人の彼女は「1-2-∞の法則」の枠組みの中で言えば、③〈その他大勢の彼女)だった。

 

彼女とは、出会い系アプリを通じて出会った。ネットワーク技術の進歩は僕のような人間を締め付ける一方で、新たな潤いを絶え間なくもたらしている。これは抗いがたい矛盾である。

中国が堪能な僕は、中華圏の女の子からモテた。日本に住んでいる外国人にとって、現地の男と付き合った方が色々と便利なのだ。

 

ただ、言葉の壁というがある。それを乗り越えることが出来る僕は、わりと優良物件だったのだろう。

 

なので、僕は中華圏の女の子と肉体関係を持つことにあまり困らなかった。彼女もそうした女の子の中のひとりだった。

 

「知ってる?台湾の国体である『三民主義』の発案者、孫文は日本に居留していた際、日本人の女性と子どもを産んだんだよ。僕はその子孫なんだ」。

僕はいつもの殺し文句で、彼女をナンパし、家に連れ帰ることに成功した。ここまではいつもどおりだった。

 

しかし、いつも通りの手順で相手とことを始めようとした時、次第に主導権が奪われ、気がつけば彼女が僕の上に跨っていた。

 

そして、彼女はおもむろに僕のものを所定の位置にセットした。突然の出来事だった。まるで、イバラのムチで打たれ荒れ狂う馬に跨るように、彼女は僕の上で激しい運動を始めた。

僕は何が起こっているのか理解出来なかった。たちまちの内に彼女に合わせ、突如パドックが開かれ荒野に放り出された一匹の荒馬の如く腰を動かさざるを得なくなってしまっていた。

 

 

そんな僕に跨る彼女は、荒馬に献身的にしがみつく貞淑な女性を装っていた。

ただ、その股は荒馬の躍動をしっかりと受け止めながら、まるで熟練のサックス奏者がドラマーのリズムに呼応し、時には挑発しながらグルーブを生み出すようなコール&レスポンスを繰り返していた。

 

一瞬の出来事だった。体中あちこちの末端神経がある一点めがけ、瞬く間に吸い上げられるような感覚が僕を襲った。

 

気がつければ僕は果てていた。たった数分の時間は凝縮され、一瞬で千里を駆け抜けたような疲労感のみが身体に残されていた。

 

しかし、彼女はすぐさま僕に第2発目を装填し、続きを始めた。

僕はわけのわからないまま、いつもの通りの手順でことに及んでいた。
僕は正常位になりいつも言っている中国語のセリフを彼女に吐きつけた。

 

「你要不要孙中山在日本留着的种子!!(孫文が日本に残した種がほしいか!!)」

 

「要!!(必要、欲しいという意味 ヤオと発音する)」

 

ヤオ!!彼女はそう叫び返してきた。

####

 

 

「彼氏じゃない関係はいらない」。

 

彼女はそうきっぱり僕に伝え、僕と会うことをやめようとした。

ただ僕はあの、千里を駆け抜けたあの感覚を忘れることが出来なかった。あの騎乗位をもう一度。

 

僕はそのため何度か彼女の気持ちを取り戻そうと試みた。彼女と別れるから付き合ってくれとも頭を下げた。

 

しかし、僕がどんな人間なのか知っている彼女はそれを軽くあしらった。そして、いつしか彼氏を作り、僕の前から消えてしまった。

 

ただ、ここからが僕の本領発揮だった。僕はこうした切れるべき縁を、慎重に慎重に扱い、メンテナンスすることに長けていた。

 

彼女は日本にいる中国人の男と付き合っていた。ただそこには、現地の男と付き合うようなメリットがないことを僕は見抜いていた。

 

僕は月に一度か二度、彼女に連絡し、彼女の日本語学習の質問などに答えていた。その努力が報い半年後、僕は今こうして新幹線に乗り彼女のもとへと向かっている。

 

再び、共に千里を駆ける。そのことのみを夢想しながら。

 

後編に続く

 

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